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備品管理ノウハウコラム

固定資産管理とは

固定資産管理とは、企業が所有する土地、建物、機械装置、IT機器、車両、ソフトウェアなどの固定資産を効率的に管理するための体系です。
固定資産管理は、会計上の管理と現物管理の二つの主要な業務領域で成り立っています。

会計上の管理

会計上の固定資産管理は、減価償却の計算や固定資産税の申告など、資産の価値を会計上で適切に処理する業務です。
この部分は、会計ソフトウェアの多機能化やERPシステムの固定資産管理機能の導入によって、自動化が進んでいます。
会計上の管理は、資産の簿記上の管理とその価値の把握に焦点を当てています。

現物管理

現物管理は、物品自体の管理を意味し、現物の配置場所や利用状況の把握、定期的な棚卸しの実施などを含みます。
この部分は、従来から手作業や目視確認によって行われてきました。
物品の現物管理は、固定資産の実態を把握し、資産の保全やセキュリティを確保するために重要な業務です。

固定資産管理における現物管理の効率化は、特に注目される課題の一つです。
従来の手作業や目視確認による現物管理では、担当者の負担が大きく、ヒューマンエラーのリスクもあります。
そのため、現代の技術やシステムを活用して、現物管理の効率化が求められています。

固定資産管理の3つの目的

管理目的1:経費削減

現物管理には、会社の財産が有効活用されているかどうかをチェックして無駄な経費を削減するという第一の目的があります。
固定資産は「事業の用に供する」ことを前提とする会社の財産です。
そのため、利益に貢献するためには効果的に活用される必要があります。

管理目的2:節税・正確な税額の算出

第二に、固定資産を適切に除却処理するため不要な資産を洗い出すという目的があります。
固定資産を廃棄する際、除却処理を行うと帳簿残高を固定資産除却損として経費計上できます。
固定資産除却損には、取り壊し費用など除却にかかった費用も含めることができるため、金額が大きくなることもあります。
こちらは節税の観点でメリットがあります。

管理目的3:セキュリティ対策

最後に、機密情報の漏洩や会社の財産の不正利用を防ぐという目的があります。
社員が顧客の個人情報にアクセス可能なPCを持ち出したまま紛失してしまえば、顧客の個人情報の流出につながる可能性があります。
こうした情報セキュリティ対策として、物品の貸出し・持ち出しを厳密に管理する必要があります。

オフィス移転や人事異動などにともない保管場所・使用場所に変更があった場合や、修理・廃棄によって稼働状況に変更があった場合には、管理台帳に随時記録し、物品現物と紐づけてルールに則って管理を徹底することが求められます。

現物管理を怠った場合のデメリット

無駄な備品の購入が発生する

例えば、開発部門でPCが余っており、使用されずに複数台保管されていたとします。
それを知らない営業部門が新入社員全員分のPCを新規購入してしまった場合、開発部門が保管しているPCは使用されることのないまま放置されます。
このような無駄な購入による経費増大を避けるためには、会計上で管理している資産が実際に現場でどのような状態にあるのか、日頃からきちんと現物管理して把握しておく必要があります。

管理対象の固定資産を正確に把握できない

現物管理が行き届いていないと、現場で誰にも使用されていない固定資産があることに、経理担当者は気付くことができません。
当然、廃棄されることもなく除却処理もされないままになってしまい、必要以上の税金を払うことになります。
現物管理を徹底すれば、遊休品・修理中・廃棄予定など各物品のステータスを正確に把握することができ、経理担当者は正確な情報をもとに償却資産税を算出できるでしょう。

固定資産管理の管理対象「固定資産」とは?

固定資産管理の対象となる「固定資産」とは、会計上の概念です。
一般的な企業では、PCやデスク、ソフトウェアやコピー用紙など、有形無形のさまざまな物品を所有しています。
固定資産とは、その中から特定の条件を満たすものを指し、貸借対照表の資産の部に計上される資産です。

固定資産の基本要件

固定資産に分類される物品は、次の条件をいずれも満たす必要があります。

a. 使用期間が1年以上であること
b. 取得価額が10万円以上であること(※手数料・送料など取得に付随する費用を含めた額)

消耗品や備品との違い

固定資産として扱われる物品は、使用期間が1年未満のものや、取得価額が10万円未満のものとは区別されます。
これらは会計上の「消耗品」として処理されます。
また、「一括償却資産」と呼ばれる固定資産もありますが、これは「備品」として区別されることもあります。

固定資産は消耗品や備品と異なり、購入時に一括で費用として計上されるのではなく、耐用年数に応じて減価償却され、数年にわたって費用として計上されます。
これにより、固定資産の価値が時間とともに減少する損耗を考慮した処理が行われます。

有形固定資産と無形固定資産の違い

固定資産のうち、実体のあるものを有形固定資産、実体のないものを無形固定資産といいます。

有形固定資産

有形固定資産は、企業が所有する物理的な資産であり、自社ビル、社用車、PCなどが該当します。
有形固定資産は実体があり、直接的な価値を持っています。

無形固定資産

無形固定資産は、企業の所有権や特許、ブランド、著作権など、実体のない資産を指します。
特許権やブランド価値などは直接的には触れることができませんが、企業価値に影響を与える重要な資産です。

たとえば、サーバーの場合、物理サーバーは実体があり直接的な価値を持つため有形固定資産に分類されます。
一方、仮想サーバーは物理的な存在がなく、ソフトウェアやデータとしてのみ存在するため、無形固定資産に分類されます。

償却方法の違いによる税法上の固定資産の分類

税法上では、償却方法の違いにより、固定資産を次の3つに分類することができます。
償却方法の違いにより、税務上の取り扱いや節税の観点から最適な処理方法を選択することが重要です。

1. 減価償却資産

すべての固定資産において選択可能です。
取得価額を耐用年数に応じて分割し、1期分ずつ費用として処理します。
減価償却資産税の課税対象となります。

2. 一括償却資産

20万円未満の固定資産において選択可能です。
取得価額を3年で均等に分割し、毎年3分の1ずつ費用として処理できます。
一括償却資産税の課税対象にはなりません。

3. 少額減価償却資産

中小企業にのみ認められている特例によるもので、30万円未満の固定資産において選択可能です。
消耗品などの場合と同様に、取得時に一括で費用として処理できます。
少額減価償却資産税の課税対象となります。

固定資産管理の業務内容

固定資産管理業務を始めるにあたり、以下の手順で準備を進めることが重要です。

1. 固定資産管理台帳の作成と運用

固定資産管理の要は「台帳」です。
社内の固定資産に関するすべての情報を、固定資産台帳に集約して一元管理します。
台帳はエクセルなどで手作業で作成することもできますが、オンライン台帳やクラウド台帳を利用することで、現物の写真を含めた情報に簡単にアクセスできます。

2. 固定資産の棚卸し

固定資産管理台帳の作成後、会社が保有している固定資産の実態を把握するための「棚卸し」を実施します。
各固定資産の情報を入力しながら現物を確認し、台帳と実物が一致しているかを確認します。

3. 固定資産管理シール(管理ラベル)の貼付

現物確認と合わせて、固定資産管理番号を記載した管理シールを物品に貼り付けます。
管理シールは、個々の固定資産を識別するために必要です。
固定資産に直接貼り付ける場合もありますが、貼り付けることができない物品に対しては、カード形式のものに貼り付けて吊るすなどの方法があります。

4. 固定資産管理規程(ガイドライン)の策定

最後に、固定資産管理のルール・ガイドラインを策定します。
固定資産の取得や廃棄など、各業務における基準や手順を明確にし、全スタッフが理解できるようにします。
また、適切な保管やセキュリティ対策に関するルールも含めることが重要です。

固定資産管理業務の運用方法

固定資産管理は一度始めたら定期的な作業が必要です。
以下では、定期業務と日常業務について詳しく説明します。

固定資産管理の定期業務の流れ

1. 設備投資計画の立案

次の事業年度の終了前に、設備投資計画を策定します。
経営計画の目標に基づき、各部門の責任者が立案し、上長の承認を得ます。

2. 固定資産の定期実査(棚卸し作業の現物照合)

会社の資産の状態を把握するために、定期的に現物確認を行います。
年次で実施され、担当者が現場で物品の状態を目視で確認し、台帳と照合します。

3. 会計処理

現物照合が完了したら、台帳の内容を会計・経理部門に共有します。
経理担当者は、台帳の内容に基づいて減価償却の計算や不要な資産の除却処理を行います。

固定資産管理の日常的な実務の流れ

1. 新たに固定資産を取得するとき

新しい固定資産を取得する際には、資料の収集から発注、検収、台帳登録、管理ラベルの貼付までの手順を踏みます。

2. 固定資産が故障・破損したとき

使用中の固定資産が故障や破損した場合には、保証や保険の確認から対応方法の検討、発注、台帳の更新までの流れを追います。

3. 固定資産が不要になったとき

使用しなくなった固定資産に対する対応方法は、遊休化、売却、廃棄のいずれかです。
それぞれの対応に応じて、台帳の更新や実務手続きを行います。

これらの業務は、固定資産管理を円滑に運用するために欠かせません。

固定資産管理を効率化する3つのポイント

固定資産の管理にはとにかく手間と時間がかかります。
しかし、企業は経営上、固定資産管理から逃れることはできません。
目視確認など、なにかと人海戦術で実施されやすい現物管理は、どうすれば効率よく運用できるのでしょうか。
ここからは業務効率化の3つの手法について解説します。

1. 固定資産管理業務の外部委託(アウトソース)

自社リソースを使わずに固定資産を管理したい企業は、外部委託を検討することができます。
会計処理や税務処理の外部委託は一般的ですが、固定資産の実査(現物管理)の外部委託はまだ普及していません。
しかし、社内での管理体制を整えることなく、外部に委託することで効率化が図れる場合があります。

2. 固定資産管理システムなどのソフトウェア導入

手作業での台帳作成や運用から解放されるために、固定資産管理システムの導入が有効です。
現物管理の効率化に特化した製品を選ぶことが重要であり、機能や価格などを比較検討する必要があります。

3. 固定資産管理を効率化するアプリの利用

システム導入や外部委託はハードルが高い場合には、スマートフォンアプリの利用が適しています。
特に固定資産管理に役立つアプリは数少ないですが、棚卸し作業をスキャンで処理できるアプリを選ぶことで、現物管理の効率化が可能です。

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